各地に存在するギルドにはそれぞれに、「駆け出し冒険者支援制度」が存在する。
ある町では回復薬セットであり、ある村では現金であったり……。
この街のギルドでも支援制度は存在する。
それは「安心安全装備一式貸出」である。
・無難な短剣
・頭から足の先までしっかり守り通す鎧一式
・素材持ち帰り用の剛皮製バッグ
駆け出し冒険者のうちその2割は、一般的に駆け出し期間と言われる半年を待たずにクエスト中に死亡する。
さらに3割はクエスト中の怪我や挫折で半年経たずにギルドを退会する。
10人同時に入会すれば、駆け出し期間終了の半年後には5人しか残らないのだ。
ギルドはどうにかしてこの数を増やせないかと頭を悩ますのである。
なぜならその後もランクが上がるだけ危険度は増していき、死者も怪我人も挫折者も増える一方なのだから。
そこまでするだけの”見返り”があるからこそ、ではあるが。
そんな駆け出し期間は当の昔に置いてきた私だが、未だに装備は「安心安全装備一式」のままである。
もちろん修繕や強化は行ってきているが、これもまたギルドの貸し出し許可事項に含まれる範囲内である。ありがたや。
ギルドとしては貸出装備が”無事に”戻ってくることが一番大事なのだ。
そう。
”貸し出した冒険者が無事生きたまま装備を返して次のクエストに旅立つ”という、半年後ほぼ半数が成し遂げられないことこそ重要なのだ。
ただこの貸出装備一式は、半年後もレンタル料さえ払えば借り続けることができる。
借物の装備を直し、強化し、直し、強化し……。
そんなこんなで早10年。
私は借物装備のまま、この街のギルドで唯一のSランク冒険者になっていた。
そしてついたあだ名が「借物の王(レンタルキング)」である。
***もうすでにありそうな、なろう系を便所で妄想したのでうp。